新印象派を代表する画家の一人 マクシミリアン・リュスの生涯と代表作は?

リュスは私自身も制作の際に参考にしている画家の一人です。

彼の作品を見ていると、色彩の鮮やかさと色彩・光学理論によるマジックに

吸い込まれてなかなか抜け出せなくなってしまいます。

一つ一つの点が計算つくされ、硬くイラスト的な印象のスーラに対して

柔らかく写実的なリュス。

 

彼はどのような環境でこのような作品を制作するに至ったのでしょうか。

 

新印象派として光と色のドラマを追う

マクシミリアン・リュスは、1858年~1941年のフランスの画家です。

イラストレーター、版画家としても活躍しました。

 

モンパルナスに生まれ、14歳で木版画職人の弟子として働き始め、

フランスで最初の挿絵入りの週刊新聞であった

「イリュストラシオン」等のために木版画を作っていました。

 

絵画の勉強も続けており、デッサンの学校や

私立の美術学校で知識を深めていきました。

 

1879年から4年間、軍役に就いた後、

木版画が時代遅れになっていたこともあり、

絵画に専念することになったのです。

 

1886年、スーラが「グランド・ジャット島の日曜日の午後」により、

点描による光と色の表現に成功し、新印象派を率いるようになります。

スーラは31歳という若さで亡くなり、その後はシニャックが

新印象派を代表する最大の画家となりましたが、

リュスも新印象派の画家として活動しました。

 

リュスは、1887年からは芸術家の街モンマルトルに住むようになり、
1888年には初の個展を開きます。

アンデパンダン展の常連であり、ほぼ毎年出品し、

1935年にはシニャックの後を継ぎ

アンデパンダン美術協会の会長となりました。

 

アンデパンダン展とは、スーラやシニャックが設立した

独立芸術家協会により行われる展覧会で、

審査を受けずに誰でも出品できるという、

それまでのサロンの保守的なあり方に対抗するものでした。

 

リュスは時代の変革の時期に生き、社会に関心を持ちながら、

信念を持ち表現することを貫いた人なのです。

無政府主義者として投獄されたリュス

リュスはシニャックと同じく、思想として無政府主義を信奉しており、

社会主義の刊行物に挿絵を描いていました。

 

無政府主義者として警察に目をつけられており、

1894年、フランス共和国大統領のサディ・カルノーが

イタリア人アナーキストに暗殺された際には関係者として逮捕され、

マザス監獄に収監されました。

 

アナーキストの「三十人裁判」の一人として裁判にかけられ、

美術評論家のフェリックス・フェネオンらとともに42日後に解放され、

これらの経験を活かし版画集を出版しています。

 

リュスは労働者階級が多く住むモンパルナス出身で、

思想もあり、労働者たちの日常生活や働く姿に関心がありました。

 

炭鉱を主題とした連作や工場が見える景色、

工事現場といった独自のテーマで描いています。

 

1899年に描かれた「鋳鉄工場」は点描は静的だというイメージがなくなるような、

労働者の熱気が伝わる作品となっています。

リュスの生きた時代は社会の混乱があり、

政治の変革期でもありました。

 

1870年から1940年まで続いた第三共和政は

大規模な公共事業を行ったため、たくさんの労働者が

公共事業に従事する姿がパリの街で見られたことでしょう。

 

労働者に対するリュスの温かい目線は

未来への希望を込めたものだったのかもしれません。

 

リュスは1940年、ナチスの圧力を受けたヴィシー政権が、

ユダヤ人芸術家を会員から排除する法律を制定したことに抗議し、

アンデパンダン美術協会の会長を辞めています。

 

亡くなる前年の出来事ですが、最後まで信念を持った生き方をしたことがわかります。

 

代表作「ルーヴルとカルーゼル橋、夜の効果」

リュスは思想を感じられる絵もたくさん描いていますが、

パリの美しい風景画も多く残しました。

 

1890年に描かれた「ルーヴルとカルーゼル橋、夜の効果」は、

夜空のグラデーションの美しさがセーヌ川の水面に反射し、

幻想的でロマンチックな点描画となっています。

この絵は2015年、東京都美術館の

「新印象派 光と色のドラマ」展に展示されていました。

 

リュスはセーヌ川と夜というテーマで他にも何枚か描いており、

好んだテーマだったようです。

 

時間によって移り変わる自然の光と街灯という

人工的な光のドラマを点描によって表現することは

リュスの観察眼と表現の巧みさを感じられるテーマといえるでしょう。

 

リュスは色彩のコントラストが新印象派の中では強めで、

ドラマチックさや迫力も表現することができました。

 

労働者への熱い思い、夜景での自然光と人工光のコントラスト、

政治的なメッセージが込められたもの・・・

どれもリュスの強い思いを感じられ、

リュスという人が身近に思えます。

 

新印象派として確実な足跡を残したリュスは、

今後も愛される画家であると思います。

まとめ

●新印象派として光と色のドラマを追う
・1858年~1941年のフランスの画家 モンパルナス生まれ
・イラストレーター、版画家としても活躍
・新印象派の画家として活動。

●無政府主義者として投獄される
・1894年、フランス共和国大統領のサディ・カルノーが
イタリア人アナーキストに暗殺された際には関係者として
逮捕された。
・42日後に解放され、これらの経験を活かし版画集を出版している。
・労働者たちの日常生活や働く姿に関心があり作品も残している。

●代表作「ルーヴルとカルーゼル橋、夜の効果」
・セーヌ川と夜というテーマで他にも何枚か描いており、
好んだテーマだった。
・「ルーヴルとカルーゼル橋、夜の効果」は、
幻想的でロマンチックな点描画となっている

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